チラシで集客万来

2色チラシと手書きチラシで集客

広告の『ズラシの術』

 京都の御朱印めぐり・お店めぐりのブログでご存知 croissant- croissant さん。

そこいらのガイド本よりも京都のことがよく分かるので、

いつも楽しく記事を拝見させて頂いています。

ある記事の中に、とても興味深い京都のお菓子が紹介されていました。

 京都東福寺の「涅槃会」で授与されるお菓子『はなくそ』です。

正体は、お正月に供えられた鏡餅のお下がりを小さく刻んで焼いた「あられ」。 

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croissant- croissant さん、ブログ掲載のお話をさせて頂いたら、

もう一つの『はなくそ』のことも教えてくださいました。

京都のお煎餅屋さん田丸弥(たまるや)で購入できる、真如堂の「花供曽」です。

こちらの方が、あられの形がよく分かります。

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 言われてみれば、たしかに「はなくそ」の形です。この「はなくそ」を、

「お供物を、鼻くそなどと不謹慎な!」とか、

「食べ物を、もてあそんでいる!」などという、

無粋な参拝者は、まずいません。

 

 

➡はなくその由来

この『はなくそ』、もちろん食べ物をもてあそんでいるのではありません。

東福寺臨済宗)の由来によると、本尊のお釈迦様へのお供えを意味する

「花供御(はなくご)」の“音とあられの形から「お釈迦様の鼻くそ」

と揶揄されるようになり、「はなくそ」と呼ばれるようになったとのこと。

それを釈迦入滅の旧暦2月15日(現3月15日前後)の涅槃会(ねはんえ)

で授与(有料)するようになったそうです。

真如堂の方は宗派が異なる天台宗ですので、由来は少し異なるかも知れません。

私は、真言宗の修験者だった今は亡き祖母から、こう教えられました。

 

 ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

お釈迦さんに供えられとったお餅を、

お寺さんが「お釈迦さんのおさがり」やいうて、分けてくれよんよ。

お釈迦さんの鼻から下がる「おさがり」やから、「はなくそ」。

みんな、お釈迦さんのおさがりや、ありがたい、いうて頂戴しよるんや。

  ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

明治生まれの祖母が、これもどこかで聞いた由来だったのでしょう。

私はこちらの方が心に残ってますが、ばあちゃんオリジナルの由来だったかも(笑

 

 

➡広告の立場から見た『はなくそ』

この『はなくそ』というネーミングを、広告の立場でみてみましょう。

 

東福寺では、お寺で「はなくそ」をお分けしていますが、

田丸弥さんでは真如堂の「はなくそ」を販売しています。

田丸弥さんは真如堂の許可を得て販売しているわけです。

 

もし東福寺の許可を得ないで、誰かが別のあられに、

東福寺のはなくそ」とシールを貼って勝手に表示したら、

不当景品類及び不当表示防止法」という法律に引っかかります。

 

 また、それを本物の『はなくそ』を知っている人が見て、

「これ、『なんちゃって☆はなくそ』かな?」と冗談めかして言ったとします。

それを聞いた店の客のオバチャンが、

「食べ物をもてあそぶな! あんた仕事できひんようにしたるさかいな~!」

これは、相手への業務妨害罪・信用棄損罪になります。

 

 

➡広告の「ズラシの技法」

さて、この『はなくそ』のようなネーミング手法を広告業界では

「ズラシの技法」と言います。遊びじゃないんですね。広告戦略なんです。

「花供御」という、どこのお寺にでもある名称だったら、

東福寺真如堂のそれは有名になっていなかったでしょう。

あえてズラして『はなくそ』と命名したからこそ、

東福寺真如堂の涅槃会の「花供御」に参拝者が集まるようになり、

お寺の存続にも貢献しているのです。

 

新しいところではキットカットで、きっと勝つ!」

ネスレキットカット受験生応援キャンペーン。

業界では、かなりの成功例なんです。

 

キットカットは、不二家が英国ロントリ-・マッキントッシュ社から

ライセンスを取得し、ネスレ日本が販売を担当しています。

毎年、受験シーズンになると九州支店の限られたエリアで、

なぜかキットカットがバカ売れするんですが、

調べてみると「キットカット」と「きっと勝っとぉ」という九州の方言が似ていて

縁起がいいからと、受験生の親御さんがお守り代わりに買ってるんです。

 

単なるダジャレと思われるかも知れませんが、実は違うはずです。

ネスレがそれまで毎年30億円を投じていた広告をやめ、

売り方と広告手法を大きく方向転換していることから、それが分かります。

ネスレはおそらく、少しお高いキットカットを新たに中高生をターゲットに

販売する目標を掲げ、「受験生を応援する!」というアイデアに到達し

キットカットで、きっと勝つ!」のネーミングが生まれたのだと思います。

 

受験生というターゲットを狙って、このようなキャッチコピーをつけるのは、

ダジャレとは言いません。広告戦略です。

「ズレる」のと「ズラす」のは、違うんですね。ズレた広告は、はずれます。

ダジャレに見える消費者の目線と、あえてズラす広告側の戦略。

そんな視点で広告を見てみるのも、また面白いかと思います。