印刷の用途はチラシだけでなく様々あります。
うちの場合、チラシ7割、その他3割くらいです。
その他の内訳はこんな感じです。
★病院・整体院・美容院・サロン等のお客様カルテ
★店舗のニュースレター・月報
★作業現場の点検表・作業日報
★学校やお役所の試験用紙・レポート
★運動会や文化祭のプログラム
★商品の説明書
★アンケートや署名集めのための用紙
★寄付・寄贈等の申込用紙
★飲食店のメニュー表
★議員さんの活動レポート
・・・etc
今回は、そのなかで少し特殊なケースをご紹介したいと思います。
アーレン症候群をご存知ですか?
あるとき、大阪在住のご婦人から、こんな問合せが来ました。
「ライトブルーの紙で、横罫線が入ったレポート用紙を探しております。実は、大学生の娘がアーレン症候群という珍しい体質で、普通の白い紙の本やノートが眩しく感じる症状で、そのため勉強が困難な状態で困っております。」
「本を読む時は、薄い色つきの透明プラスチックの下じきのような板を使用して文字を読んでおりますが、自分のノートやレポートを書く時は仕方なく普通の白い紙を使っております。色つきのサングラスも使用していますが、非常に不便です。」
「文具店やインターネットで水色の紙のノートを探しましたが、(適したものが)見当たらず、困っていたところに、御社が色上質紙の印刷をしていらっしゃることを知りました。ライトブルーの紙に、レポート用紙のような横罫線を印刷して頂くことをお願いできますでしょうか。」
妥協しない。あきらめない。
うちの印刷は、入稿頂いた原稿で印刷するのですが、ご希望は「横線の幅7mm~10mm。形態はルーズリーフ。水色の用紙で罫線が点線のもの」で、印刷のもとになる原稿はないとのことでした。
熱意に促されて、特例ですがルーズリーフの原稿をライトブルーの色上質紙に試し刷りして郵送しました。
届いた試し刷りを、お嬢様が実際に使ってみた結果、しっくりこない点があるとのこと。「変更のお願いですが、罫線が点線ですが、直線にして頂けないでしょうか? 点線が目にチカチカする、と申しておりまして」。
そこで罫線を直線に変更したのですが、罫線を直線にしてみると、こんどは直線だと用紙の色が眼にしっくりこないとのこと。「お手数をおかけして申し訳ありません。紙の色が病気の娘には重要だったので、神経質に思われたら失礼しました」。お母様、丁寧なやり取りの中にも、妥協は一切されません。
眼の病気にかかわることですし、学びは一生にかかわることです。アーレン症候群に限らず、こうした病気や障害に社会が十分に対応できていないことは、ブログやtwitterでもよく見聞きしていました。
大学で学んでいて、これから社会に出るお嬢様のために、あきらめる訳にいかないお母さまのお気持ちが痛いほど伝わってきました。
最終的に、クリアブルーという少し濃い青の色上質紙が直線の罫線にしっくり馴染むことが分かり、両面印刷したルーズリーフの試し刷りを郵送しました。そして返事が届きました。
「夕べ、試し刷りを受け取りまして、とても良いもので感謝しております。まさに娘に必要なノートです。」
仕事に投じたものは無駄にならない、しない
お母様の「娘のために決してあきらめない愛情」が、お嬢様に必要なものを創り出したと言えます。ないものなら自分が創る。親の愛情の、なんと尊いことでしょう。
このご依頼、印刷に入るまでに要した時間と手間を考えれば、採算はまったく合いません。「情に流されていてはビジネスとしては失格」という声もあるかも知れません。
しかし私は、そうは思いません。うちの会社はこれによって、アーレン症候群で困っている人に提供できる商品とノウハウを手に入れたのです。
この記事も皆様が読んでくださることで、検索上位に表示され、アーレン症候群に悩む人たちの目に留まりやすくなるでしょう。この記事が参考になって、共同作業で必要なモノを作ろうとされる方も、いるかも知れません。
大げさかも知れませんが、 ブルーノートを手に入れたお嬢様ともども、私どもも飛躍の酉年にしたいと願っています。
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